遺言が無効になるケースと、無効を主張したい場合は?
目次
遺言が無効になる場合と無効を主張したい場合の対処法
遺された親族に自分の想いを届けるものが「遺言書」です。
遺言自体は、自分一人でも作成はできますが、遺言書の作成方法は法律で厳格にルールが定められているため、場合によっては遺言が無効になってしまう可能性があります。
また反対に、相続人にとっては、遺言の内容に納得がいかず、遺言を「無効にしたい」という場合もあると思います。
今回は、自分で作成した遺言が無効にならないために気をつけるべきポイントと、相続人として遺言を無効にしたい時に取るべき対処法について、徹底的に解説します!
遺言が無効になる原因とは
遺言には、
①自筆証書遺言
②公正証書遺言
③秘密遺言
の3種類があります。
一般的に多くの人は自筆証書遺言と公正証書遺言を作成するケースが多いです。
自筆証書遺言の作成方法
自筆証書遺言書の作成のポイントは以下の通りです。
(1) 全文を自筆で書くこと
(2) 縦書き、横書きは自由で、用紙の制限はありません。筆記具もボールペン、万年筆など使用する者は自由(録音や映像は無効です。)
(3) 日付、氏名も自筆で記入す
(4) 捺印をすること。(認印や拇印でも構わない)
(5) 加除訂正する時は、訂正個所を明確にし、その個所に捺印の上に署名
自筆証書遺言が無効になる原因
・日付がない
・遺言書の一部をパソコンで書いたり、代筆したりする
・訂正方法を誤る
・署名押印がない
公正証書遺言の作成方法
まずそもそも、公正証書遺言書の作成方法は以下の通りです。
(1) 証人2人以上の立会いのもとで、公証役場へ出向くこと。
(2) 遺言者が遺言の内容を公証人に口述すること。(聴覚・言語機能障害者は、手話通訳による申述、または筆談により口述に代えることができます。)
(3) 公証人がその口述(口授)を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、または閲覧させること。
(4) 遺言者および証人が筆記の正確なことを承認したうえで、各自が署名捺印すること。
(5) 公証人がその証書を法律に定める手続きに従って作成されたものである旨を付記して、これに署名捺印すること。
公正証書遺言が無効になる原因
公正証書遺言書は法律の専門家が作るため確実なものとされていますが、例えば以下の5つの原因で無効になることがあります。
・遺言能力がなかった
・口授を欠いていた
・証人が不適格だった
・真意と内容に錯誤があった
・公序良俗に違反していた
遺言書を無効にしない!7つの注意点
以上より、遺言を作成する場合には、以下7つの点に注意しましょう
自筆証書遺言の場合
・日付の記載、署名、押印を必ず行う
・全て自筆で書く(遺産目録のみデータでも可)
・正しい方法で訂正する
公正証書遺言書の場合
・口授を必ず行う
・資格のある人を証人にする
・遺言書に残したい意図と記載する内容に齟齬がないよう厳密に確認する
・公序良俗に違反していないか意識する
遺言書の無効を主張したい場合のチェックポイント
では反対に、「遺言の内容に納得がいかない!」という場合は、「遺言を無効にしない」ことと反対のことを行い、遺言書自体が有効なものかを確認する必要があります。
自筆証書遺言書のチェックポイント
①遺産目録以外、全て自筆かどうか
②作成日自筆で書かれているか
③署名と押印があるか
④訂正がある場合、正しい方法で訂正を行っているか
⑤遺言作成時に遺言能力があったか
⑥第三者からの強要がなかったか
⑦公序良俗に反しないか
公正証書遺言書のチェックポイント
①証人になる資格がない人が立ち会っていないか
②証人の人数が2人より少なくなかったか
③遺言者と証人の署名・捺印があるか
④公証人の署名・捺印があるか
⑤遺言作成時に遺言能力があったか
⑥第三者からの強要がなかったか
⑦公序良俗に反しないか
実際に無効を主張する場合
①相続人全員の同意を得たうえで遺産分割協議に切り替える
遺言を無効にしたい場合、まずは相続人全員との話し合いで解決する必要があり、話し合いで遺言内容とは異なる形で相続財産を分割することができます。
②「遺言無効の調停」の手続きをする
相続人間の話し合いの中で1人でも遺言を無効にすることに反対する人がいる場合、当事者だけでは話し合いを集結させることはできない可能性が高いです。
その場合、家庭裁判所に対し「遺言無効の調停」を申し立てることになります。
家庭裁判所が絡んでくると、話が一気に進みそうな気がします。
しかし調停とは調停委員が当事者の間に入って、互いの主張を聞いたうえで双方の妥協点を探り解決していくという、あくまで話し合いによる解決策のため、それも難しい場合には調停を省略し、「訴訟」を申し立てることができます。
③訴訟の手続きをする
調停で話が解決しなかった場合は、訴訟の申し立てをします。
遺言の無効を主張する相続人の方が原告となって、それ以外の相続人等が被告となって争います。
最終的には裁判所の判決で遺言が無効になるかどうかが決まりますが、相続人間の関係性が悪化する可能性や裁判が長期化することもあります。
そして遺言書が有効であると判決された場合には遺言書の内容どおりで、無効と判決された場合は遺産分割協議で分割内容を改めて決めます。